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今回はついに配信が解禁された【パラサイト半地下の家族】についてネタバレ有りレビュー書いてみます。非英語圏の映画として初めてアカデミー作品賞を受賞したパラサイトについて、私なりの考察を吐き出してみたいと思います。
目次
パラサイト半地下の家族とは
韓国映画『パラサイト 半地下の家族』は『グエムル-漢江の怪物-』『母なる証明』を手掛けた韓国を代表とする名監督、ポン・ジュノがメガホンをとった作品。日本では2019年1月に公開されました。韓国で社会問題化している「格差社会」を描く。第72回カンヌ国際映画祭では、最高賞の「パルムドール賞」、そして第92回アカデミー賞では、作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4部門で受賞を果たしました。
あらすじ
仕事も計画性もないが楽天的な父キム・ギテク。そんな甲斐性なしの夫に強くあたる母チュンスク。大学受験に落ち続ける息子ギウ。美大を目指すが予備校に通うお金もない娘ギジョン。しがない内職で日々を繋ぐ彼らは、“半地下住宅”で暮らす貧しい4人家族だ。 ・・・(中略)・・・“半地下”で暮らすキム一家と、“高台の豪邸”で暮らすパク一家。相反する2つの家族が交差した先に、想像を遥かに超える衝撃の光景が広がっていく–。
Amazon プライム ビデオ より引用
伏線の考察
伏線1・水石
ストーリ冒頭でギウが「富・学術向上をもたらす」として友人のエリート・ミニョクからもらった「水石」。この石は様々なメタファーを表現して映画全編についてまわります。
前半から中盤にかけてギウは石に宿る力を過信する場面が目立っていましたね!
- 半地下の家の前で用を足している通行人を追い払う
- 大雨で水没したときに大事そうに持ち出した
終盤にかけては良く言えば『未来を開くためのお守り』、悪く言えば『すがりつく対象』になりかかっていました。
- 誕生日パーティーにて石を抱えて地下室へ
何かが吹っ切れて冷静さを欠き、さらに悪い方向へ助長する象徴的シーンが
- リスペクトおじさんに石で頭をかち割られる
結局大事にしていた石で重傷を負わされるという展開になります。
回復したギウが向かったのは川でした。
- 石を川へ戻す
ギウがあるべきものをあるべき姿に還したことで、気が大きくなった自分を戒め、新たな計画を進めるための決意表明だったように思います。
水石が象徴しているのは【誰もが胸に抱えているしがらみ】や【すがりつきたい理想】です。水石を捨ててリスク承知で歩き出す?それとも胸に抱えたまま無計画で夢を見る?視聴者の人生観を揺さぶる名シーンです。あなたはどうしますか?
実は、半地下の家の壁に『知足安分』という言葉が額に入れて飾ってあります。「知足」は足ることを知り、身分をわきまえて欲をかかないこと。「安分」は自分の境遇・身分に満足すること。この物語全体を示唆するような言葉です。1回目では気づかないような仕掛けがいくつも散りばめられているのがパラサイトの面白さです。
そんな伏線や小ネタあったかなぁ??と思ったあなたに朗報です!
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伏線2・ランプ
これまた、私は1回目では気づかなかったシーンです。
パク社長の初登場シーンで例のリスペクト・ランプがタイミング微妙な点灯の仕方をしています。階段を登ってくるパク社長の後方でランプ点灯 → シーン転換 → そして再びシーン転換してランプが写り込んだときにはランプが不自然な消え方をしています。
劇場での初見で不自然に感じた人はカンが鋭いです!私は1回目では全く気付きませんでした。2回目でストーリーがわかった状態で見て違和感を感じ、巻き戻したところで気付きました。もちろん、あの衝撃的なリスペクトシーンに繋がるワケです。
初見で気づくか気づかないかの絶妙な間合いでシーン転換する演出。
さすがオスカー監督。ポンジュノ本当にアッパレです。
伏線3・ダソンの絵
作中で出てくるダソンの絵はどうみても幽霊ことリスペクトおじさんを描いていますね。
ギョロっとした目、皮膚の色、そして背景にいろんなヒントが描いてあります。テントと太陽、血塗られている?灰色の棒のようなもの、下から上に上がってくる矢印。まるで要注意人物の特徴を貼り合わせて作成されたモンタージュ写真のようです。
ダソンははじめから面接に来たギウに矢を射てみたり、ギテク一家が同じ匂いだと見破ってみたり、あの机の下からの脱出シーンで『緊急事態』とドンピシャのタイミングで無線を鳴らしたりとさすがエリートの血を引いているだけあって感性が鋭いです。
テントでライトを不自然に揺らしながら色を変えているシーンもありましたが、あれも何かの信号なのか?私にはわかりませんでした。モールス信号?詳しい人はぜひもう一度見返して教えていただきたいです。
伏線4・親北ギャグ
これは伏線というよりは、爆笑してしまったポイントです。ホントに劇場では思わず吹き出してしまいました。韓国の人にとってもあの北朝鮮のTVアナウンサーの独特な口調は揶揄の対象なんだなぁというのが興味深いポイントでした。
ミサイルのボタンうんぬんのポリティカルなギャグもブラックな中にもニュースでは知り得ないリアルな市民感情を読み取ることができて普通に良かったです。アメリカ映画の政治ギャグとは一味違った非英語圏の映画での政治ギャグはちょっと新鮮でした。
こんなギャグを笑っていられる平和な世界であってほしいものですね。
伏線5・時計回り
時計回り、反時計回りを執拗に表現する演出が多用されています。裕福なパク一家は時計回り、半地下のギテク一家は反時計回りを交えて表現されています。
時計回りのシーン
- ソファーでのイチャイチャシーン
- パク邸の地下室への扉のレバー
- 息子ギウが初めてパク社長邸を訪れたとき
まずは社長夫妻がソファーから庭を眺めつつまさぐり合うベッドシーン。なぜか奥様は時計回りに触ってほしいと求めます。劇場で初見の際には濡れ場シーンにワクワクした方、気まずくなった方、いろいろでしょうがコミカルと緊張とエロとがカオスになった本映画でのベストシーンの1つであることは間違いないでしょう。
また、パク邸の地下室への扉も時計回りに回して開けていましたね。最も印象的なのは息子ギウが初めてパク社長邸を訪れたとき。青々とした竹に爽やかな風が吹き、光に照らされながら右回りの階段を登っていくシーン。輝かしい裕福なパク一家の家庭・邸宅の描写に時計回りが多い気がします。
多くの男性が気になったであろうあの美人奥様。演じていたのはチョ・ヨギョンという俳優さんです。
“エロチック史劇の女神”との異名をとっていた時期もあるそうで、過去作の濡れ場シーンはプロ魂が垣間見えます。気になった方は要チェックですよ!
反時計回りのシーン
- 運転手食堂の食事シーン
- 庭でハンマー投げ
- パク社長を刺殺したあと逃走シーン
一方の反時計回りですが、まずギテク一家が運転手食堂で食事するシーン。一家は取り皿を片手に料理の盛られたビュッフェの周りを反時計回りに進んでいます。もう1つ、パク一家がキャンプで不在のシーン。元ハンマー投げ選手であるチュンスクがなぜか庭でハンマーを投げます。この時の回転方向も反時計回りでしたね。いくら開放的だからと言ってなぜハンマーを投げるかは謎すぎて笑えます。そしてパク社長を刺殺したあと逃走するギテクが駆け下りる階段も反時計回りでした。爽やかな風と光の中登った同じ階段を、血塗られた顔で逃げるように駆け下りるシーン。印象的でなんとも言えないコントラストでした。
時計回りと反時計回りで2つの家族の対比を表しているように思えますね。
ギテクを演じたソンガンホの怪演が特に印象に残った人も多いでしょう。今回の父・ギテク役はお世辞にもカッコいいとは言えないおじさん感が溢れていましたが、過去にはハリウッド大作の主要キャストを演じたり、シュッとしたカッコいい役も多い韓国の国民的俳優なのです。名実共にアジアのムービースターになったソンガンホの今後にも注目です!
幻の仮タイトル?最初の案は『パラサイト』ではなかった!?
この映画、『パラサイト』というタイトルに決まる前は『デカルコマニー』『ロールシャッハ』というタイトル案があったそうです。
いずれもインクを紙に落として左右対象の模様を使うのですが、これがこの映画の仮題だったのはなぜでしょう?
ここから先はあくまで私見です。
裕福な家族と貧困な家族。
一見、相反して逆の形のような家族に見えますが貧富という『一線』で区切られているだけで、本質的には同じもの。そういうメッセージがあるんじゃないかと深読みできます。
なぜならギテクが『妻への愛』という人類共通、本質的に変わらないものを語りながら『一線』を踏み越えようとしてきたときにパク社長は強烈に拒絶します。
裕福であることと貧困であることという合わせ鏡のような真逆の形をしているものの、その実、人間の本質はそんなに変わらないものだと本能的にわかっているが故に尚更、一緒にするなと拒絶したのかもしれません。右回りと左回りは一線を軸に折り曲げてしまえば重なる、同じものなのです。
そう思うと、この映画のロゴの右回りと左回りの渦にもメッセージが込められているような気がしてなりません。

まとめ
明らかな悪党も天使もいない映画で、みんな適度に悪く、適度に善良で、適度に卑怯で、適度に正直な人々がもつれて破局に至ります。
私たちがニュースを見るとき、結果だけ見ます。それは誕生日パーティーの芝生の上で起きた結果だけです。でも、そこには私たちが簡単に察知できない長い脈絡があるんです。
映画はそんな結果に達した微妙な段階を2時間にわたって追っていけるーそれが映画の力ではないかと思う。
ポン・ジュノ監督のライブトークより
秀逸なエンターテイメントでありながら、人間の本質を描くメッセージ性もあり、何度見返しても発見があるのがこの作品の良さです。
オスカーをとった映画として納得の素晴らしい作品でした!最高。
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